「AIを使ったほうがいいのは分かる。でも、うちの会社のどの仕事に使えるのか分からない」。ご相談の初めによく伺う言葉です。ChatGPTを試しに使ってはみたものの、日々の業務にどう取り入れればよいか見えていない会社も多いのではないでしょうか。
中小企業基盤整備機構の調査(2026年3月公表)によると、AIを導入している中小企業は20.4%、導入を検討中は18.6%でした。まだ多くの会社が「これから」という段階にあります。
この記事では、中小企業のAI導入を何から始めるかを決めるために、業務の棚卸しのやり方を紹介します。想定しているのは、従業員5〜50名ほどの会社で、1日で終えられる規模の棚卸しです。
AI導入が「何から始めるか」で止まってしまう理由
- AIでできることから話を始めてしまい、自社の業務に結びつかない
- 社員に「AIで効率化できる業務を出して」と頼んでも、日々の作業が当たり前になりすぎて、候補が出てこない
- 全社で一度に取り組もうとして、計画が大きくなりすぎる
- 先にツールを契約したものの、使う場面が決まらず、そのまま使われなくなる
進めるには、この順番を逆にします。まずはAIの話の前に、いまの業務を書き出すところから始めましょう。
業務の棚卸しのやり方(1日でできる版)
- 書き出す(午前):事務や受注、経理などの担当者に1週間の作業を振り返ってもらい、作業ごとに1行で書く。社長や管理職の想像で埋めず、実際に作業している人から聞く
- 数字を入れる:それぞれの作業に「月に何件か」「1件に何分かかるか」を記入する。おおよその数字でよい
- 形を書く:作業に入ってくるものについて、紙・FAX・PDF・メール・電話・Excelのどれに当たるかを書く
- 判断を書く:その作業の最後に人が判断すること(送るか、登録するか、支払うか)を書き添える
- 選ぶ(午後):下の表を使い、最初に取り組む1業務を選ぶ

AIに向く業務・向かない業務を見分けるには
| 確認する点 | AIに向いている | AIでなくてよい・向かない |
|---|---|---|
| 件数×時間 | 月の合計で10時間以上かかる | 月に1〜2時間で済む |
| 入ってくるもの | 書式がそろっていない書類、文章のメール、手書きのFAX | 形が決まっているデータ(既存の機能やExcelの関数で処理できる) |
| 作業の内容 | 読む・探す・分ける・下書きを作る | 計算する・決まった手順に沿って処理する |
| 最後の判断 | 送る・登録する前に、人が確認する形にできる | 確認を経ずに外へ出てしまう |
計算や手順の決まった処理には、AIよりもExcelや業務ソフトの機能、通常のプログラムを使うほうが確実です。棚卸しを通じて、AIを使わず、いまあるツールの設定変更だけで減らせる作業が見つかることもあります。これも立派な成果といえます。
よくある失敗とその避け方
| よくある失敗 | 避け方 |
|---|---|
| ツールを先に契約し、使われなくなる | まず業務を選び、それに合う仕組みを考える |
| 社員それぞれの工夫に任せた結果、使う人と使わない人に分かれる | メールやフォームなど、普段の作業の裏でAIが動く形にする |
| 計算や送信までAIに任せて、誤りが外に出てしまう | 計算はプログラムで行い、送信や登録は人が確認した後に行う |
| 効果を把握できず、続けるかどうか決められない | 開始前の「件数×時間」を記録しておき、1か月後と比べる |
まとめ:業務を書き出すことからAI導入を始める
- AIの話を始める前に、実際に作業している人と業務を書き出す
- 件数×時間、入ってくるものの形、最後の判断という3つを確認する
- 最初は1つの業務に絞って取り組み、効果を測ってから広げる
- AIを使わずに済む作業は、いまあるツールで改善する
棚卸しで候補に挙がりやすい業務については、「問い合わせメールの自動化は、分類・台帳への記録・返信の下書きから始める」や「注文書PDFからExcelへの転記を減らす方法」で例を紹介しています。費用の目安は「AI業務自動化の費用はいくら?」に、補助金については「デジタル化・AI導入補助金2026とは」にまとめました。
業務ごとにどのくらい時間がかかっているか、その目安は業務時間の試算で算出できます。一緒に棚卸しを進めたい方は、無料相談(30分)でお話を伺います。川越市と周辺の会社であれば、訪問し、作業の様子を見ながら整理することも可能です。
参考(2026年10月15日確認):中小企業基盤整備機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」
